それは、ある学校の、1つの教室から始まった。
 


その日は何かの会合でもあったのだろうか。
大人、子供関係なく、たくさんの人間が集まって何かを食べていた。
そのときである!
ガツガツと皿の上の物を食っていた人たちの姿がゆっくりと変わってきたのだ。
そう……豚に……。

これは皮膚感染する、新しい奇病だった。
病気の者に触れた瞬間、1分ほどで体が完全に豚に変わってしまう、恐ろしい病気。
治療法はなかった。
豚に変わった者にはもはや人間に戻れる可能性は皆無で、理性を失い、本能のままに動き回るのだ。

事態がエスカレートすれば、全ての人間が豚に変わってしまう。
世界が破滅するのは、大袈裟ではなく、時間の問題だった。

 
 
そのことに気付いたある若者たちは、即座に行動を起こした。
彼らは自衛隊の隊員だったのだが、そのことが出てくるのはもう少し先の話である。

ところで彼らのとった行動はこうだった。
まずはこの奇病が発生した学校の教室から、豚たちを外に出さないようにしたのである。
何せ触れただけで感染するのだ。
しかも豚たちはかなりの数。
逃がしては対処が極めて困難になる。

次にとった行動。
それは、この豚たちを“処分”することである。
しかし、それは想像以上に難しいことだった。
豚たちの動きは早い上、通常よりもずっと小さなサイズだったからである。
まさに手乗り豚・・・。
うかつに触れれば感染するため、刃物は不利。
拳銃も用いるが、動きが速いため当たらない。


そうこうするうちに、とんでもないことが起こった。
教室の床に、小さな穴があき、そこから数匹の豚が逃げ出したのである。
隊員たちは焦った。
その焦りがミスを生み、うっかり豚に触れた隊員が、何人も豚になっていった。


隊員たちが絶望に陥りかけたとき、1人の女性隊員が叫んだ。

「3匹の子豚!!」

・・
・・・
・・

3匹の子豚・・・。
誰もが知っている童話だ。
子豚の兄弟がそれぞれ家を作り、順に狼に襲われる話。
末の弟のレンガの家のおかげで、子豚たちは狼を撃退でき、めでたし、めでたし・・・となる。

しかしここで大事なのは、話の流れではない。
『狼は豚を食べる』
という点である。
何も狼の主食が豚だというわけではないが、この発想は隊員たちに一筋の光をもたらした。

 
 
続く。

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