ショックで頭が真っ白になったドーベルマン。
彼が我に返ったとき、おそらくその場に居る者たちは、ただの肉片と化すだろう。

そしてドーベルマンはついに動いた。
だがそれは周囲の予想を多少、裏切るものであった。
彼は大声で泣き始めたのである。
それは哀しい咆哮だった。

しかし次の瞬間、牙がキラリと光ったのを、さきほどとは違う女性隊員が見逃さなかった。
彼女はこの隊の副隊長である。
まだ若いが、なかなかの実力者だ。

ドーベルマンが泣き狂いながら周囲の人間を襲おうとしたとき、彼女は誰もが驚くことをやってのけたのである。

 
ドーベルマンの吠える声に合わせ、共に歌い始めたのだ。
始めはただ同調するように歌っていたが、ドーベルマンがその声で感情の行方を変わってきたのを見届けると、今度は歌詞をつけ、裏切られた悲しみ、それでも主人を慕う心をドーベルマンに替わって歌った。

ドーベルマンも彼女の歌の意味がわかるのだろうか。
声に合わせて遠く吠えた。

そしていつの間にか副隊長の歌声にすっかり操られてしまっていたドーベルマン。
歌の歌詞も、哀惜から、世界を救うというような歌詞に変わってきている。
そう。
副隊長の彼女は、まだドーベルマンに豚を殺させるとこを諦めてはいなかった。

ドーベルマンは、この新しい主人の意思を理解した。
そして一匹、この教室に入り、手当たり次第に豚を噛み殺し始めたのである。
豚たちは慌て、逃げ惑った。
的が小さいため、なかなか思ったようにいかないドーベルマンだったが、少しずつ任務を遂行していった。

だが・・・。

 
 
そんなことではもう間に合わなかった。
豚たちはすでに、学校だけではとどまらず、村中に広がっていったのである。
 
 
 
続く。

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