愛よ、永遠なれ。
2003年1月4日ピッ、ピッ、ピッ、ピッ・・・
何かの電子音がする。
ここはどこだろう、温かい。
自分の覚えている最後の記憶では、冷たい、凍りつくような水の中に居たのに・・・。
ゆっくりと目を開けてみた。
クリーム色の天井。
ダメだ、まだ視界が安定しない。
瞼が重くて、また目を閉じた。
ここはどこだろう。
また同じ疑問を繰り返す。
常識的に考えれば、ここはどこかの部屋の中だ。
ダムの中に飛び込んだのを誰かに助けられたと考えるのが一番無理がない。
もしくは、非現実的だとが思うが、ここは天国なのかもしれない。
宗教によって死んだあとのことが変わってくるのが多少の謎だが、天国なんてあって嫌なものでもないだろう。
とりあえず体に異常がなさそうだ。
さっきから聞こえる電子音は一瞬、自分の心音を表しているのかと思ったが、そうではないらしい。
体は一日飲まず食わずで働いたときのように疲れて重いが、とりあえず意思通りに動く。
異常はない。
・・・異常は、ない・・・。
彼に会い損ねた。
誰だか知らないが、余計なことをしてくれたものだ。
でも・・・彼のいない人生なんて意味はない。
そう、意味はないのだ。
☆
何かが顔に当たっている。
やめて、私は眠りたいの。
もう起きたくない。
夢の中でなら、彼に会える。
それでも、得体の知れない何かは、ずっと私の顔を舐めつづける。
・・・・・舐める?
跳ね起きることこそできなかったものの、私はパッと目を開けた。
そしてそこで、有り得ない物を見て、本気でここを天国だと思うようになった。
「ドーベルマン!?」
尻尾を振りながらワンッと吼える犬は、間違い無くドーベルマンだった。
間違えるはずがない。
共に愛惜の歌を歌い、私たちのために闘ってくれ、そして、彼が最期に助けようとした犬なのだ。
でも・・・どうして?
そのとき、私を呼ぶ男の声が聞こえた。
その声が脳に届いた瞬間、息ができなくなった。
肉体は問題ない。
精神が、息をするのを忘れるくらい動揺したのだ。
だって、この声は・・・。
ドーベルマンがさっと私の視界から消える。
全ての音がシャトアウトされる。
新たな人物が視界の中に入ってくる。
目が、耳が、全てその人物の為だけに活動する。
涙は出ない。
言葉も出ない。
ここはどこ?
だって、あなたは・・・あなたは・・・
抱きしめられた。
長く、太い腕が私の体を絡め取る。
私もその背に腕をまわす。
1分、2分・・・
何も聞こえない。
吐息さえも。
3分、4分・・・
何も見えない。
私は泣いていた。
「どうして?」
なんとか言葉を搾り出す。
もっと他にいい言葉があったかもしれないが、それしか浮かばなかったのだ。
彼は私を抱きしめたまま、掠れるような声で説明した。
今までのことを。
あのときドーベルマンを助けようとして飛んでいき、何とか水の中から救い出すことができたらしい。
でも、もう逃げる時間はなかった。
彼は凄まじい爆発で戦闘機ごと吹き飛ばされたのだ。
しかし、戦闘機が最新の型だから良かったのか、直接爆撃されたわけではなかったからなのか、とにかく運が良かったのだろう。
彼は生きていた。
そしてドーベルマンも。
彼は吹き飛ばされ、機のコントロールを失ってからも何とか立てなおそうとし、最後の最後でドーベルマン共々脱出したのだった。
だが酷い重症だったらしい。
最近まで意識が戻らなかったというのだ。
それも当然だ。
よく見ると、まだ彼の体にはたくさんの包帯や、ギプスがつけられたいる。
そしてその彼とドーベルマンを見つけて治療してくれたのが、この病院の先生だった。
ここの先生は変わり者で、世間からは一線を画した生活をしているとのことだが、それはおいおいわかるだろう。
私がすんでのところで発見され、助けられたのも、非常に幸運だったのだ。
そして、彼とまた巡り合えたのも・・・。
彼は、もう一度言わせて?と言って、私と正面から向かい合った。
「結婚、しよう。」
私は返事をする前に意識を失ってしまった。
今度は眠りにつきたかったのではない。
幸せに、体の力が抜けてしまっただけだった。
《完》
何かの電子音がする。
ここはどこだろう、温かい。
自分の覚えている最後の記憶では、冷たい、凍りつくような水の中に居たのに・・・。
ゆっくりと目を開けてみた。
クリーム色の天井。
ダメだ、まだ視界が安定しない。
瞼が重くて、また目を閉じた。
ここはどこだろう。
また同じ疑問を繰り返す。
常識的に考えれば、ここはどこかの部屋の中だ。
ダムの中に飛び込んだのを誰かに助けられたと考えるのが一番無理がない。
もしくは、非現実的だとが思うが、ここは天国なのかもしれない。
宗教によって死んだあとのことが変わってくるのが多少の謎だが、天国なんてあって嫌なものでもないだろう。
とりあえず体に異常がなさそうだ。
さっきから聞こえる電子音は一瞬、自分の心音を表しているのかと思ったが、そうではないらしい。
体は一日飲まず食わずで働いたときのように疲れて重いが、とりあえず意思通りに動く。
異常はない。
・・・異常は、ない・・・。
彼に会い損ねた。
誰だか知らないが、余計なことをしてくれたものだ。
でも・・・彼のいない人生なんて意味はない。
そう、意味はないのだ。
☆
何かが顔に当たっている。
やめて、私は眠りたいの。
もう起きたくない。
夢の中でなら、彼に会える。
それでも、得体の知れない何かは、ずっと私の顔を舐めつづける。
・・・・・舐める?
跳ね起きることこそできなかったものの、私はパッと目を開けた。
そしてそこで、有り得ない物を見て、本気でここを天国だと思うようになった。
「ドーベルマン!?」
尻尾を振りながらワンッと吼える犬は、間違い無くドーベルマンだった。
間違えるはずがない。
共に愛惜の歌を歌い、私たちのために闘ってくれ、そして、彼が最期に助けようとした犬なのだ。
でも・・・どうして?
そのとき、私を呼ぶ男の声が聞こえた。
その声が脳に届いた瞬間、息ができなくなった。
肉体は問題ない。
精神が、息をするのを忘れるくらい動揺したのだ。
だって、この声は・・・。
ドーベルマンがさっと私の視界から消える。
全ての音がシャトアウトされる。
新たな人物が視界の中に入ってくる。
目が、耳が、全てその人物の為だけに活動する。
涙は出ない。
言葉も出ない。
ここはどこ?
だって、あなたは・・・あなたは・・・
抱きしめられた。
長く、太い腕が私の体を絡め取る。
私もその背に腕をまわす。
1分、2分・・・
何も聞こえない。
吐息さえも。
3分、4分・・・
何も見えない。
私は泣いていた。
「どうして?」
なんとか言葉を搾り出す。
もっと他にいい言葉があったかもしれないが、それしか浮かばなかったのだ。
彼は私を抱きしめたまま、掠れるような声で説明した。
今までのことを。
あのときドーベルマンを助けようとして飛んでいき、何とか水の中から救い出すことができたらしい。
でも、もう逃げる時間はなかった。
彼は凄まじい爆発で戦闘機ごと吹き飛ばされたのだ。
しかし、戦闘機が最新の型だから良かったのか、直接爆撃されたわけではなかったからなのか、とにかく運が良かったのだろう。
彼は生きていた。
そしてドーベルマンも。
彼は吹き飛ばされ、機のコントロールを失ってからも何とか立てなおそうとし、最後の最後でドーベルマン共々脱出したのだった。
だが酷い重症だったらしい。
最近まで意識が戻らなかったというのだ。
それも当然だ。
よく見ると、まだ彼の体にはたくさんの包帯や、ギプスがつけられたいる。
そしてその彼とドーベルマンを見つけて治療してくれたのが、この病院の先生だった。
ここの先生は変わり者で、世間からは一線を画した生活をしているとのことだが、それはおいおいわかるだろう。
私がすんでのところで発見され、助けられたのも、非常に幸運だったのだ。
そして、彼とまた巡り合えたのも・・・。
彼は、もう一度言わせて?と言って、私と正面から向かい合った。
「結婚、しよう。」
私は返事をする前に意識を失ってしまった。
今度は眠りにつきたかったのではない。
幸せに、体の力が抜けてしまっただけだった。
《完》
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